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2024/06/24 00:49

前回からの続き

球磨焼酎への思いをお聞かせください

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江戸時代、米焼酎のステータスはすごく高かったんですね。
一番上等の日本酒の4倍の価格で取引きされていたという記録も残っています。
しかし、戦後の闇市で焼酎のイメージは地に落ちてしまいました。粗悪なアルコール飲料が「焼酎」の名で売られたからです。
常圧蒸留の貯蔵熟成酒はスコッチやコニャックと同じように味に深みがあります。
この焼酎を広めていけば、日本酒が日本では最高の酒、本格焼酎はワンランク下というこの図式をひょっとしたらひっくり返せるのではないかと思っています。

今後の展開としてはどのようにお考えでしょうか

現在、海外との取引きがあり、タイ、シンガポール、イタリア、フランスと取引きがあります。台湾とフィリピンとももうすぐ取引きすることになっています。こういった海外との取引きを広めていきたいと考えています。
また、私は焼酎造りの仕事を非常にクリエイティブなものと思っています。
私が焼酎にのめり込んだのはブレンドという技術なんです。
ブレンドで素晴らしい味を追求する、その面白さに気づいてからこの仕事が本当に好きになりました。
焼酎を飲食文化のみならず芸術の域までもっていけたら本望だと思っています。

愛読書、影響を受けた本などありますでしょうか

まず、ボードレールの「悪の華」、原書で読むために仏文を専攻したくらいです。
国内で著者を1人あげるとすれば、小林秀雄。彼の著書もボードレールを通じて読み始めました。
小林秀雄は、自分が感想を書いてきた人間だと言っています。
自分の人生の中で本当に好きなものと面と向かって付き合っていく。これが、自分がやってきたことだと語っています。
たとえば、『近代絵画』などから始まって、ランボー、モーツアルト、ドストエフスキー、最後は本居宣長と一連の流れがあると。
本来はまったく流れはないわけですが、小林秀雄という人物をトレースしていったら、そこに一連の思想の流れが出てくるわけです。
そういった所に面白さを感じます。全部読まれることをおすすめしますが、まずは『近代絵画』あたりを読まれるのがいいかと思います。

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近代絵画 (新潮文庫)
小林秀雄
Amazon

最後に熊本のビジネスパーソンに向けてメッセージをお願いします

一つの物事に対して多角的な面から捉えることが大事だと思います。
例えば、お酒を飲むにしても、その味わい、口に入れる前の香り、それから最後の余韻に至るまでの一連の流れ、そういった流れの中に刻々と変化するストーリーが生まれます。
お酒がこれだけ味わい深いんです。人間はそれ以上に味わい深いはずです。
現代人は急速なデジタルの普及により外の世界を見ることに重きを置きすぎて、内の世界、自分の世界を深く追求することをやめてしまっている傾向にあるという気がしています。
ですから、自分自身を見つめてみることが大事ではないでしょうか。
所詮、人間は自分のフィルターを通してしか他者を知ることができないわけですから。
自分のことを知らないことには他者なんて分かりようがありません。
自分の新しい視野を広げるという意味でも、まずは自分自身を追求することが必要ではないでしょうか。

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