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2024/06/24 00:48

弊社の取引銀行である肥後銀行様の「職場のまどぐち」に取り上げていただきました。
以下、その内容です。(許可をいただいたうえで転載します。)

INTERVIEW
球磨焼酎の市場を世界へ拡大
老舗蔵元のブランディングは30年後の市場を見据えた長期戦
六調子酒造株式会社
代表取締役
池邉 道人 氏
世界的にも貴重なブランド「球磨焼酎」。ウイスキーのスコッチやブランデーのコニャック、ワインのボルドーなどのように、品質と造られる地域が深く結びついていることが認められているお酒です。
そんな球磨焼酎が造られる人吉球磨には27の蔵元が存在しますが、酒類販売の規制緩和や種類の多様化、さらには2020年7月に発生した豪雨の影響などにより厳しい状況が続いています。
そのようななか、新たな市場開拓の動きがあり、これまでの国内だけでなく、海外へ市場を広げる活動が各蔵元で展開されています。
注目したいのが、ヨーロッパやアメリカなどのコンペティションへの出品、相次ぐ入賞による、球磨焼酎への世界的な評価の高まりです。
「六調子酒造株式会社」もそんな蔵元のひとつ。
早期からスコッチ、コニャックと並ぶ球磨焼酎の地位向上を図り、商品づくりに着手し、海外への市場を開拓してきました。


今回は六調子酒造株式会社社長である池邉道人氏にお話を伺い、これまでの経緯や取組み、球磨焼酎に対する思い、今後の展開などについてお聞きしました。

池邉社長についてお聞かせください

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当社は、1923年、大正12年創業で、今年で100年になります。
この六調子酒造株式会社は祖父が創業しまして、父が2代、叔父が3代、そして私が4代目となります。
家業ではあったのですが、別の思いがありまして大学卒業後はとある出版社にひろっていただき勤め始めました。
そして、この会社を継ぐために帰ってきたのが28歳のときで、35歳で社長に就任しました。

社長に就任された当時のエピソードについてお聞かせください

私がちょうど社長に就任したとき、大凶作で原料の米が手に入らないという状況になってしまい、非常に苦労したことをおぼえています。恐らく、当社始まって以来の赤字決算だったと思います。
その際に、非常に危機感を感じました。その頃から生き残りを真剣に考えるようになりました。
また、この会社を継ぐために帰ってきた28歳の頃には、世の中は減圧蒸留(※注)全盛期の時代になっていました。
うちの会社でも地元向けに減圧蒸留酒の製造をしていたんですが、あの当時は群雄割拠状態で、地元の酒蔵がいかにテリトリーを広げるかという厳しい生存競争をやっていたわけです。
とにかくたくさんの量を造っていかなくてはいけない。しかし、バブル時代で人手不足。そういった状況だったので、ひとりの従業員が休んでしまうとそこを穴埋めするのが大変で、場合によっては全体をストップするということを何回も経験しました。
それなりに売上はあったので経済的に追い込まれるということはありませんでしたが、人がいないと会社が回らないということを経験しました。
(※注)減圧蒸留は蒸留器を密閉して真空ポンプで中の空気を引き出し、気圧を下げることにより沸点を下げて蒸留する方法。一方、常圧蒸留は大気圧(沸点が100℃の状態)で蒸留する方法。それぞれの蒸留法で香りや味わいが異なる。

常圧蒸留の貯蔵熟成酒に特化されていますが、そこに至るまでの経緯をお聞かせください

時代が進むとディスカウントを始めるところが出てきました。こういうところは他業種からの参入で酒類業界にいたわけではないので、従来の因習にとらわれない発想ができるわけです。
売れていないようなメーカーに行って、まとめ買いで仕入れてくる。安く仕入れて、安く売るわけですね。
そういうのが瞬く間に全国的に流行っていったんです。
地元でも始めるところが出てきて、大きな組織が酒屋さんを買収してディスカウントストアを始めていました。
さらに、2000年に大規模小売店舗法が廃止されました。これによりこれまで出店しにくかった大規模店舗の規制が緩和されたわけです。
そのあと、酒類小売免許法も緩和されてしまったため、もともとあった酒屋さんはどんどん潰れていきました。
結果的に大きいところに集約されていったわけです。
この状況を見て、このままいけば確実に行き詰まるぞと思いました。これから先どうやって生き残っていこうか本当に真剣に悩みましたね。
ただ私は経済人に向いているとはぜんぜん思っていませんでした。商売そのものもそれほど好きではなかったですし。
でも、大酒飲みだったんですよね。美味しいお酒には目がありません。
米で造った焼酎がスコッチやコニャックに負けるはずがないと、とにかく当初から思っていました。

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そして、うちには会社創業時から今日に至るまで一貫してやってきた常圧蒸留貯蔵熟成酒の技術と蓄積がありました。飲んでみても美味しいし、これに賭けてみようと思ったんです。
そういった経緯で、常圧蒸留の貯蔵熟成酒に特化していくことにしました。そのためにはターゲットを絞り込み、会社のイメージを分散させず、少しの販売量でもしっかり稼げるようにしようと思いました。
常圧蒸留の貯蔵熟成酒は、値崩れしない、競争力の高い、他が真似できない希少性の高い製品になるだろうと思ったわけです。
長期熟成酒というのは寝かせるのに長い年月を要するので、他が真似しようと思っても時間がかかります。
その間にも我が社はさらに先に行く。追いつけないわけです。
さらに、急に売れ始めても量産できない。数量も限定的です。周りに合わせて安くしてしまっては意味がないと考えました。

貯蔵熟成酒の特化以外に取組まれたことはありますか

ダウンサイジングしました。
現在は一升瓶と四合瓶に絞っています。
以前は紙パックや五合瓶、350ml、ワンカップ、その他のPB商品なども製造していましたが、すべての商品の利益率を計算したんですね。そうしたら、コストと効率が鮮明に見えてきました。
うちくらいの生産規模と人員ですと、そこまで広げる有益性を感じませんでした。
 後半に続く