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2024/06/16 19:44

ゴールデンウィーク前のことですが、あるお客様より「今、特吟六調子の封を切って飲もうとしたら、ベンジンのような凄まじい臭いがしてとても飲めたものではない。調べてほしい。」とお電話を頂戴しました。そのお客様は貰ったものだと仰っていました。早速送り返していただき、見てみるとすごい薬品臭がします。これは確かに飲めた代物ではありません。切られたキャップシールの封は確かに弊社のものです。箱の裏蓋の日付を見ると「平14.11.8」となっています。つまり瓶詰されてから15年が経過しています。でもどうしてこんな臭いが付いてしまったでしょう。そしてこの臭いの正体は??…
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僕は早速車を飛ばして熊本市の熊本県産業技術センターへ、この異臭のする焼酎をボトルごと、それと比較対象のため正常品の「特吟六調子」を一本持ち込んで分析を依頼しました。対応いただいたN先生は「箱をよく見てみるとかすかに漏れた跡がありますね。横倒しにして長期間放置されていた可能性があります。とにかく、ガスクロに掛けてみましょう。」と懇切にご対応いただきました。
次の日、早速お電話をいただき、「臭いの正体がわかりました。100%ナフタリンです。成績表も出します。」ということでした。
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これがガスクロの成績表です。
下に表示されている六角形が二つくっついている図がナフタリンの構造式です。
なるほど、そう言うことか。普通、みそとかチーズなどのにおいの強い物のそばに焼酎、(それも未開封の)を置いておいても移り香などなかなかするものではありません。しかし、防虫剤の類は別です。強い浸透力があるのです。クリーニングから返ってきたスーツなどをビニールの袋に入れたままクローゼットにしまっても、防虫剤はビニール越しに繊維の一本一本まで浸透し防虫効果を発揮します。この特吟六調子はかなりの長期間にわたって防虫剤の充満したクローゼットに保管されていたのでしょう。焼酎は蒸留酒ですから腐りません。アルコールが抜けないようにしっかり栓をして、直射日光が当たる場所とか、特に高温になる場所を避けていただければ悪くなることはありませんし、お客様のお問い合わせにもそのように答えてきました。しかし、こんな盲点があったとは。
特吟六調子は現在、平成18年蒸留のもので、11年間熟成をしています。しかし、瓶に詰めてしまえば空気に触れないため、瓶熟成(分子のクラスターが細かくなる)はしても本格的な熟成はストップすると言われていますから、早く飲まれることをお勧めします。第一、ガラス瓶はともかくキャップやキャップシールの耐用年数はせいぜい5~8年くらいです。
今回の件、結構な費用が掛かってしまいましたがいい勉強になりました。
でも、考えてみると最近の防虫剤は臭いがしないものもあります。ナフタリンは強烈な臭いがするので判ったのですが、無臭の薬品だったら判らなかったかもしれません。
これはちょっと怖いですね。
そこで結論。
「保管場所にご注意を。」