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2024/06/16 19:38

ずいぶん前からなのですが複数の取引先から、弊社の熟成酒に「~年物」いわゆるヴィンテージを入れてほしいという要望があっていました。しかし僕はそれに頑強に抵抗し続けてきたのです。
それには2つの理由があります。

理由その1 酒が過小評価されてしまう恐れがある。
熟成酒は味を創るのに2種類以上の酒をブレンドするケースが多々あります。「~年物」と入れる場合、ブレンドした中で最も若い酒の年数を書かなければなりません。たとえば10年物と5年物をブレンドした場合「5年物」としか表記できないのです。2種類くらいのブレンドなら併記しても構わないのですが、複雑なブレンドですと表記するのも大変です。しかし実はそれ以上に、ブレンドの手の内を全部明かしてしまうことになります。たとえば「古代一壺」や「太古一尊」などかなりの種類の樽酒をブレンドします。そしてそのブレンド法は僕が自分の身体を使って毎晩実験を繰り返し半ばアル中になりながら開発したものです。簡単にマネされちゃたまらないなあ、と思っちゃいます。これって偏狭な考えでしょうか?

理由その2 「~年物」が価値基準として独り歩きするのは好ましくない。
焼酎はまだ「~年物」が価値基準として根付いていません。ですから年代物熟成酒の味わいをご存じない方が多いのは仕方のないことです。そのような中でヴィンテージ表記が独り歩きするのは危険なことだと思うのです。
たとえばそのようなお客様が「10年物」と書かれた焼酎をお買い求めになったとします。でもその10年物は「減圧」で、蔵の片隅に売れ残ったものを放置しておいたら10年経っていたというだけの代物だったらどうでしょう。減圧ですから熟成するはずもなく、むしろ香りは抜けていて薄っぺらな味、飲まれてみてガッカリ、焼酎の10年物なんてこんなものか!と思われたらこの上もなく悲しいことです。当分、熟成酒は中身で勝負でいい、「~年物」でお客様を釣るのはいかがなものでしょう。

とまあ、そんなことを言い続けてきたわけです。でも、ある取引先に「本物の~年物をお客様に正しく伝えるのも熟成酒の大事は啓発活動のひとつじゃないの。あんたがやらないで誰がやるの?」と言われてハッとしました。殺し文句とはこういうのを言うんですね。コロッとその気になってしまいました。やっぱりうれしかったんですよ、そう言われて。

と言うわけで、まず手始めに「本吟六調子25度720ml」と看板商品の「特吟六調子」から、このようなステッカーを貼ることにしました。
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本吟六調子25度720ml「7年物(平成22年蒸留)」
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特吟六調子 「11年物(平成18年蒸留)」

一年間で売れる数を見越してステッカーを作り、酒は毎年古くなりますし、売りつくしたら次の年代物に代わりますので、毎年作り変えます。ちょっと大変ですがとにかくやってみます。今、久々に気持ちの高揚を感じています。